美術についてこの頃考えたこと

美術において、どんな宗教、主義、人種、性格の人が制作しても「良いものは良い「」と言うことを世界の多くの人々が当然のように分かるようになったのは、多分、日本の浮世絵に影響を受けた印象派以後だ。モネ、ゴッホ、ピカソ、ミロ、シャガールだののビッグネームが連なる西欧近代美術の完成期の時代だ。

一万年前であろうが、ヨーロッパであろうがアフリカであろうが、全ての造形物をすべて同じような気持ちで美術として楽しめるようになった。作られたときは、狩りの成功を祈るものであったり、キリストさまのありがたみを伝えるものであったとしてもだ。。
それまでは、いつの世にもいる少数の物好きは別として、もっとも良心的な宣教師でも、アメリカの先住民の彫刻を破壊したりしていた。
作品が、どんな宗教、人種、性格を背景にもっていても「良いものは良い」という考え方があれば過去から大切にされてきた偶像が破壊されたりすることは格段に減るし、変わった人が作った変わった作品を変わった人が愛でると言う行為も、非常には非難されたり逮捕されたりすることは滅多にないから新しい感覚の美術も生まれやすい。
とはいうものの、やっぱり、21世紀の今になっても、性格の悪い人が作った偏執狂的美術は一般受けはせず人気とはならないし、タリバンがバーミアンの石仏を爆破したりする。
その理由に関しては、いくつか思い当たる。
まず、どうも、こういう考え方、近代ヨーロッパで大系化される背景には、植民地主義の結果アジア、アフリカなどの当時のヨーロッパ人が自分たちとは全然別の感覚の美術に触れる機会(破壊しながら)が増えたことがある。
そういう意味で、ヨーロッパの印象派以後の近代美術の考え方を帝国主義的と捉える考え方がある。ある意味ヨーロッパ近代の痛いところをついている。
随分前だが、朝鮮総連所属の在日朝鮮人画家との酒席でピカソら20世紀初頭の前衛運動を帝国主義的と評するのを聞いて驚いたが、差別と抑圧を身近に感じてきたマルクス主義者にもそういう西欧近代美術に対する違和感があるのかもしれない。
西欧近代の前提にある非ヨーロッパに対する搾取を意識しているわけだ。
タリバンにも異教の偶像を嫌うこととともに偶像を宗教から独立した美術として捉える近代西欧の思想の方を嫌う面もあるのかもしれない。。
もう一つ、やっぱり、その国や民族が昔から受け継いで出来た感覚(実際には先祖伝来のものとは限らず、為政者や大金持ちに恣意的に作られた感覚や一過性の流行だったりもするだが)は、やはり、美術の良し悪しを判断する基準にかなりの影響を与える。
日本なら例えば侘びサビで、ヨーロッパのバロックの脂っこい官能性には顔を背けたくなるとか。ルーベンスの脂肪でっぷりのお腹やお尻はやっぱり人気無い。

日本においても脂っこくて、偏執狂的な装飾過剰は縄文時代、平安初期、東照宮などの江戸時代などにもあったが、現代でそう言うものを作ると、下品とされることが多い。
そんな感じで、西欧近代が言うところの「良いもの「」よりも、属する社会、民族、国家で一般的によしとされるものの安心感に価値をおくことはどこでもなくならないだろう。
全く体質の違う美術の中に、自分の心や自分たちの文化の要素と通じる要素を見つけて楽しむのにはやはり、かなりの修行と気合い又は反骨精神を必要とするのだ。
この西欧近代の美術が示す『良いもの」の概念は宗教や主義、美人とか可愛いとかの時代や地域で変わる基準を頼りにしないから普遍性は格段に高い反面、抽象的なもので、そもそも感覚的には非常に分かりづらい面がある。
そして、その民族や時代に常識とされる文化と全く違うものを、平気で楽しむ個人が多いというのは、国家主義者には邪魔なようで、全体主義的国家の政府が弾圧を西欧的近代美術に加えたのは20世紀以降の歴史にたびたびある。

だから、権力や大多数に流されないという本来の近代美術あり方というのは立憲主義とか徹底した個人主義とかに重なるところがあるのだ。

そんなこんなで、曲がりなりにも焼き物の専門教育を受けたことのない自分が日本的な侘びサビとはまったく縁もゆかりもない屈折した内容の器を作っていられるのも、近代ヨーロッパ由来の美術の考え方が有ったことが大きいから、やっぱり好きな考え方なのである。安倍首相がいろんな事言ったとしてもだ。
なんだか、何言いたいんだか分からなくなっちゃったけど、終わり。
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彫刻家でもある鈴木厚が磁器を中心に器を制作しています。

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