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ギリシア古典期は実はブロンズ中心だった。。

DSC_0751_20110725220052.jpg
ミュロン作 円盤投げ ローマンコピー 原作紀元前450年頃 高さ155cm 大理石 ローマ国立博物館
円盤投げ頭部
同頭部
いや驚いた。
ギリシア彫刻というと、こういう白い大理石の楚々としたイメージじゃないですか。
でも、このミュロンの名作・「円盤投げ」は、ローマ時代のコピーであることは知っていたが、原作は大理石ではなくブロンズだったらしい。
じつは、フィディアスやプラクシテレスなどギリシアの最盛期(古典期)の巨匠の作品はどうやら、ブロンズのものが多かったらしい。

それが、偶像崇拝を嫌うところの、キリスト教、イスラム教の時代に青銅は貴金属だからほとんど鋳つぶされて無くなったと。
それで、大理石のものばかりが残ったと。
つまり、残っているのは大理石中心だったアルカイックのオリジナル大理石と古典期に主流になったブロンズの名作の大理石ローマンコピーが大多数と言うこと。
大理石も、壊されたし、セメントの材料となったりしたがブロンズほど完全には無くならなかったと言うこと。
だから、残っている数少ないギリシア古典期ブロンズオリジナルは近代になって難破船から上がったものがほとんど。
つい最近、図書館で、小学館の世界美術大全集5 「古代地中海とローマ」の最後尾に掲載されている関隆志著 「ローマン・コピーの作り方」という論文を読んで、これをしって目から鱗であった。
論文によると人類史上初めての古美術品コレクターはローマ市民だそうだ。


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アンティキュテラの青年 紀元前350年~325年頃 ギリシア、アンティキュテラ島沖出土 ブロンズ 高さ194cmアテネ国立考古博物館
こういうのが当時は、いっぱいあって、ギリシアというと大理石の楚々として清澄なイメージですが、実際ははかなりギラッとしたものだったようだ。
これも海中から出たもの。
で、これ見て、気づくのは、作品はスッポンポンのお兄さんだけということ。
それが大理石のコピーは、こんな細い足首だと直ぐ折れるので、なにげに足にくっついて、木の切り株とかが立っている。これが、結構鬱陶しい。邪魔。
ブロンズは中空に出来て軽量だし粘りもあるから、それが無くて済む。
足首などには中に鉄心が入っているのかもしれない。
スッキリして実に良い。素晴らしい作品。
上の円盤投げの左足にも気の切り株のような物が付いてますね。名作にはたくさんコピーがあるが、オリジナルにない支えはコピー作者が適当に作っているので各々全く違う。円盤投げにはブロンズのコピーも残っているが、支えついてない。



で、その作り方だが、フリーハンドのもあるらしいが、石膏で原作を型どりしたモノから星取と言う技法で大理石に写したのがExakte Kopietと呼ばれ貴重とされるらしい。
円盤投げの写真をよく見ると髪の毛の所に小さな角みたいな出っ張りが二つあるでしょう?
それが、星取機と今は呼ばれる立体測量機をセッティングしたあと。普通は出来上がると削り取るのですが、それをずぼらで取り忘れたらしい。

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これが、私の持っている現代の星取機。ギリシアのはどんなんだか知らないが多分理屈は同じ。
使い方を文章で説明するのはめんどうなのでやめますが、上の写真の枝見たいのを、下の棒に付けて3この尖った部分で、大理石と原型交互に引っかけて測量する。
要するに、枝は腕みたいに関節があって自由に動くのだが、石膏型に点、点を打って、そこに枝の針先を当てて関節が動かないように大理石の方に当てて、大理石に針先の位置まで彫り進むと同じ形になると言うこと。(うーん、上手く説明でけん!!)針は前後にスライドするが、元の位置を記憶するようになっている。

星取機
ベルテル・トルヴァルセンによる「星取法」の実例 コペンハーゲン、トルヴァルセン美術館
こんな感じで作業する。
星
アントニオ・カノーヴァ ナポレオン像頭部 1802年 石膏 イタリア、ポッサーニョ、カノーヴァ石膏美術館
点、点(星)を打った原型。この星はかなり少ない、かなり上手い職人だ。私は父実の石膏原型を木に写す作業をしていたがこの3倍は打っていた。


<br />石膏型
アリストゲイトン像石膏型断片 原作紀元前477/476年 イタリア、バイア出土 高さ21.6cm
これが、模刻工房の遺跡から出土した石膏型断片。ギリシアのオリジナルブロンズから直接型どりしたと推定されている。
良いでしょう?!!
まぶたが異常に出ているのは、ブロンズは細いものが作れるからまつげが作ってあったらしいのだが、外型が抜けるようにブロンズに蝋か粘土を盛ったらしい。

DSC_0760_20110725220053.jpg
ピレウスのアルテミス1 紀元前4世紀中頃 ブロンズ 高さ194cm ギリシア、ピレウス出土

これは近年発掘された、古典期後期のオリジナルブロンズ。
衣服、玉眼、肉の感じが生々しい。
所謂、古典期ギリシアのイメージではない。
どこか、18,19世紀に山ほど作られた擬古典主義の彫刻みたいなインチキ臭い匂いもある。案外、擬古典は的をえているところもあるんだと今回初めて思った。
まあ、往々にして、侘びさびの入り込む余地のないほどに保存がよいオリジナル(あるいは過激に修復されたオリジナル)とはこういうものだ。
しかし、仏像での金ぴか、ギラギラは予想がついて慣れているが、人類の至宝、若々しく晴れやかなるギリシア最盛期なので、ちょっと驚いた。
まあ、癒し的に快いばかりでなく、神経をザラッと逆なでする感覚があってこそ本物という立場の美術家としては嬉しい面もちょっとある。


ラボルト
パルテノン神殿西破風彫刻 ラボルトの首 紀元前438~433年頃 アテネ、アクロポリス出土 大理石 高さ41cm 

ラボルト。パルテノンの破風についていた彫刻の断片。
これは、ギリシア人の作った数少ない古典期オリジナルの大理石の一つ。これは本当に素晴らしい。えも言えぬ神秘的な力。
古代彫刻の魑魅魍魎的な底知れない部分をほのかに残しつつも、現代人が直接共感できる、ユーモア、叙情性もある。それに美人。
いわゆるギリシア彫刻最盛期のイメージだ。
美大受験の時に石膏型をデッサンしたがその頃から、なんだか大好きだった。
鼻、口と顎に修復があるとのこと。

(写真は一部を除き小学館世界美術大全集 4,5巻より)
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テーマ : 絵画・美術
ジャンル : 学問・文化・芸術

Tag:美術・彫刻・絵画  Trackback:0 comment:8 

Comment

ニュルンニュルンのマイスターダンドラー URL|オリジナル・ブロンズ
#- 2011.07.27 Wed13:42
ローマ時代の模刻工房から石膏型でてますか!
石膏取りはダビンチが、ノートのうえで初めて考えついた、と思ってました。でもギリシャは蝋の直づけで、鋳物失敗したら1からやり直しですね。
おっしゃるとおり、残ってる古典期のブロンズ作品は、すべて近代の発掘品ですね、ロダンの彫刻は古典に対する誤解が元になってますね。ロダンは知らなかったはずです。
デスピオあたりは知ってたのではないかと思います。
うちのおやじはヨーロッパ旅行して、帰ってきてから地山なしの人体を作り始めました。御者は見てないはずですが、ポセイドンは見てます。
ぎんよう URL|Re: オリジナル・ブロンズ
#Yx4q6d1M Edit  2011.07.27 Wed20:16
にゅるんにゅるんどの

> ローマ時代の模刻工房から石膏型でてますか!
私も初耳だったんですが、「帝政時代の文献によればアテネのアゴラにあったヘルメス像が彫刻家によって毎日型が取られた結果、型取り用のピッチまみれなったとある。型が『毎日』取られていた事実から、当時コピー生産が盛んに行われていた様子が知られる」と論文に出ていた。
ピッチってなんだか分かりませんが、粘土でないブロンズから型取りするのも結構大変だよね。
どうやってそんなにジャンジャン取っていたのかこれも不思議だよね。


> うちのおやじはヨーロッパ旅行して、帰ってきてから地山なしの人体を作り始めました。御者は見てないはずですが、ポセイドンは見てます。
なるほど。
うちの父も70年代の全盛時代はみんな地山が無くて、鉄板を貼り付けていました。顔を替える人など。
写実的雰囲気の作品の地山って結構扱いが面倒だよね。
私もポセイドン好き。見たこと無いですが。
アルカイックや、仏像みたいな様式的なものだと、筋斗雲や魔法の絨毯みたいな意味合いの素敵な感じの台座たくさんあるね。
マイマイ URL|Re:ギリシア古典期は実はブロンズ中心だった。
#ACiYtQpQ Edit  2011.07.27 Wed20:36
ギリシャ彫刻が実はブロンズ中心とは! 日本と違って
さびないでしょうけれど、鋳つぶされたとは。
武器にでもされてしまったのでしょうか。
ぎんよう URL|Re: Re:ギリシア古典期は実はブロンズ中心だった。
#Yx4q6d1M Edit  2011.07.27 Wed22:04
マイマイどの
えーとですね、論文を見たところ、ギリシアはローマに併合されたわけですが、多少の、名作ギリシア彫刻(ブロンズ)の略奪はあったものの、やはり信仰の対象を強引にローマに盛ってくることは皇帝でもむやみにはできなかったらしいです。
そう言うわけで、オリジナルの多くはギリシアに残ったわけですが、ギリシアは4世紀にキリスト教、15世紀にイスラム教の時代になって完全に鋳つぶされたらしいです。
転用の目的は論文には書いてなかったのですが、その時代になりますと、鉄の時代ですから、武器と言うより壺だの鐘だの工芸品が主だったんではないかと想像します。
しかし、歴史書に残る名品が一つ残らず鋳つぶされてしまったとは。
惜しくてたまりませんが、そう言う無茶苦茶が十分あり得ると全身で分かっていた古代人にして創造しえた物凄い文化だったと思ったりもします。

また、ブロンズが多くのこったら、あの人類文明の春を思わせる、誰もが好きなギリシア文明のイメージは出来なかった気もします。
鋳造されたブロンズは生々しくギラつくところがあります。白く優しい大理石の風合いと失われてしまったものへの哀惜はロマンティックなものです。
カデンツァ URL|
#- 2011.07.30 Sat14:36
今頃すみません。私事で恐縮ですが、ちょっと教えていただけるとありがたいです。

私が昨年ポーランドで買ってきたショパンの手は石膏でできていますが、
別の方がお持ちの一昔前のバージョンは、ブロンズだったのだと言って見せてくれました。
どちらも、ショパンが亡くなった時、型を取ったもののレプリカだということです。

ですが、ブロンズ製は私の石膏製と比べて全体に大きく、指が太くてごつい手で、
なんだかインチキっぽく思えてしまいました。

材料がちがえば質感も変わってくるのでしょうが、
同じ型で同じものを作っても、しあがりのサイズまで変わってくるものなのでしょうか?
まあ、所詮レプリカだからその程度のものでしかない、ということかしら?
ぎんよう URL|専門でないんでよくはわからないのですが、理論的には、
#Yx4q6d1M Edit  2011.07.30 Sat16:52
カデンツァさん
おかえりなさい!お暑うございます。
えーとですね、今ちょっと調べても確実には分からなかったんですが、石膏は固まるときにほんの少し(0.15%ぐらい)膨張するんだと思うんですが、よく名作の彫刻もそうなんですが、型取りしたものからまた型取りするみたいに海賊版がたくさんあります。
その時に孫ひ孫とドンドン行きますが、膨張するとすると、その膨張が重なって世代が進んだ方が大きくなると言うことは理論上は考えられます。
そこから取ったブロンズは大きいと言うことになりますね。となると、カデンツァさんの石膏の方がオリジナルの世代に近いと言うことになります。収縮だとすると逆。
今はあるいは、技術の進歩で眼が飛び抜けるような値段でなくても素性の良いものがあるかもしれません。

一般に同じ内容ですと、大きいものの方が情報量を水で薄めた感じで間が抜けてインチキ臭い感じになります。
また、ブロンズのテカテカ感も日本人は大体において抵抗ありますね。

カデンツァ URL|
#- 2011.07.31 Sun00:34
なるほど、だいたいわかりました。ありがとうございます!
結局は作った人に聞かなくては真相がわからないのでしょうが、
あつしさんに解説を受けて、自分の石膏品を信じようという気になりました。

ブロンズの手をお持ちのピアニストも、ポーランド留学中、
デスマスクとともに震えながら手に入れたとのことでした。
そもそもがこれを見つけた時点でピアノ弾きは舞い上がりますので、
インチキなどと言える資格はないですよね。
ぎんよう URL|わざわざありがとうございます。お役に立てず。。。
#Yx4q6d1M Edit  2011.07.31 Sun11:04
カデンツァさん
まあ、いろんな品物が流通している全体を通して、いろいろチョロッと狡するやつとかいても、やっぱりオリジナルに価値があるからですから、まあ、どれが正統とか気にしないで楽しまれてはいかがでしょうか。
きっと良いものですよ。持っていると、やはり、良いことがあるのではと思いますv-238
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彫刻家でもある鈴木厚が磁器を中心に器を制作しています。

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