磁器の釉掛けと窯詰めと父の命日

現在、窯詰め中です。

焼き物の最終段階の焼成の前に言うまでもなく、うわぐすり(釉)をかけます。
大きなバケツの釉液(石灰か木灰、長石、珪石、カオリンなどの粉を溶かしてある)にスッポリつけて、均一にかけるのだ。
釉掛けが今回は作品が溜まっていた事(約2窯分)、釉が5種類(石灰透明釉、灰釉2種、バリウム入りの青磁釉、イラボ釉)、磁器である事の面倒が重なって、まる10日かかってしまった。

磁器である事の面倒と書いたが、磁器とは何かをちゃんと書くのはそれこそ面倒なのだが、陶器は地中にもとからある粘土(陶土)を高温で焼成してつくる(土もの)のに対して、磁器は石ものと呼ばれ、全部あるいは半分ほどを陶石や風化した長石を砕いたものを練って人工的に土(磁土)を作る。
透明度が高く、ガラス化が陶器より進んでほとんど吸水しない。叩くとチーンと金属音がする。
よくある、スヌーピーのマグカップやデパート等で売っているご飯茶碗等磁器のものが多い。


自分は焼き物を本格的に始めるときに磁器から始めているので、そういうものだと思っていて、あんまり大変だとは思っていなかったのだが、やはり、今になっていろいろ焼き物全体について多少理解が進むと、「磁器は大変でしょ?」とよく陶芸家諸兄に言われたがその意味がわかってきた。
ざっと書くと、
・磁土は粘土(陶土)に比べて粘りと腰がなくてロクロ等の成形が難しい。
・乾燥と焼成での収縮が大きく、割れ等の傷が出やすい。
・白いのが基本で、鉄粉等の不純物が土や釉に混入すると黒い点になるので、仕事場や道具を清潔に保たなくては行けない。
・焼成時に、柔らかくなり、重みで形が変形して、例えば皿が円盤になってしまったりする。
・染め付けの場合は、呉須で描いた絵がにじんだり流れたりしないよう、高温で液体化しても流れない粘りを持った釉を使うが、高温で流動化しないという事は施釉時の凸凹がそのまま出来上がりに出てしまうので、釉掛けに神経を使う。
など。
陶器では、釉掛けの乱れや、形のゆがみが味となったりするが、磁器では普通の意味で整っている事が割と重要だったりする。

そんなこんなの磁器の作業の中、ここのところ苦闘していた釉掛けの中で、一つ裏技を発見したので書きます。
釉はは篩で漉して、ダマを取り、鉄分などの不純物を除去するのだが、磁器の白い地には、目に見えないほどの鉄粉がごま粒ほどの黒い点として出るので、なるべく目の細かいふるいをとおしたい。
しかし、これがなかなか通らず、釉液がふるいの中に溜まってしまう。
ゴムベラで押す、ゴム手袋をした手のひらで押すなどというコツを陶芸裏技の本やネットで見てやっていたのだが、今回、自分的に究極のコツを発見した。

スポンジで篩の網を一こすり!たちどころに溜まっていた釉液はじゃーじゃー下に落ちる!落ちる!

篩の丸い形に合わせて、車のワックス用の丸いのが最適。



写真は、関東では見た事のない200目の篩。九州のTさんに送っていただいた。
非常に目が細かく、陶芸材料店で普通に売っているカオリンや長石は丸一日もミルですらないと全然通らない。

中のは、車のワックス掛け用の丸いスポンジ。
バケツについた釉を残らず集めたりするのにもゴムベラより全然便利。
IMG_4023.jpg

しかしついでに、不純物まで落ちてたりして。。。
この方法で漉した釉でまだ一度も本焼成していないもので間もなく焼成しますので、問題がでたらまたご報告します。


そして、今苦闘中なのが、窯詰め。
IMG_4027.jpg

釉液中に、素焼き(低温焼成)した器素地をつけると、軽石のように水をさっと吸うので、表面に厚さの均一の釉の固まった層が残る。しかし、そうはうまく行かないで、液がしずくで垂れた跡が残ったりするのだが、それを、ネット状のヤスリ、彫刻刀などで削ったり、足りないところを筆で足したりして、修正する。
先に述べたように、染め付けでは、近くにライトをおいてほんの少しの凸凹も見逃さないようにして厳密に作業する。

そのあと、いよいよ、窯詰めだ。
窯の中に、耐火性の棚をくむのだが、棚板の上に、品物を乗せてシュミレートして、棚板ごと窯の中に持ち込むことも多い。

先に磁器の難しさで、器が高熱で柔らかくなって変形すると書いたが、コーヒーカップの把手の重みで、径が歪んで楕円になるのを避けるために、傾けて焼成する。傾ける台は窯の壁と同じレンガで作る。

IMG_4028.jpg
窯に入れた、大皿。カーボランダム製棚板とツクと呼ばれる柱で棚を組んである。
高温で、重みでダレてこないよう、下から器と同じ磁土で作った小さな円錐(トチというらしい)で支えてある。
器が焼成が進むにつれてこれから約一割縮むわけだが、トチを棚板(こちらは縮まない)の上に直接おくと器から離れてしまって用をなさないので、器と同じ銘柄の磁土の板の台(ハマ)に器を乗せて、その台にトチもつけてある。
高台の中(つまり見込み)もダレないよう、小さなトチで支えてある。
ハマと器がくっ付かないよう、高台下に酸化アルミナ粉をぬりつけてある。

現在は、技術が進みなくなったらしいが、ちょっと前までは、工場生産のお皿にも、裏に小さなトチ跡が残っていたりした。
腰のところをもう少し分厚く作れば、このくらいの鉢に近い形であれば支えなくても持つ事が多いのだが、自分はどうも、腰の薄い持って軽い感じの器が好きで、薄く成形してしまうのでトチが必須となる。

そんなこんなの面倒くさい磁器の窯詰めで、暑い事もあってきょうは疲れがたまって休んでしまった。

疲れがたまった事に加えて、一昨日は、父実の命日であった。
何人かの人が、お花を贈ってくれたり、ご焼香に見えたりした。
もちろんうれしいし、例年来てくれた方が来ないとやっぱり、気になるし、見えると安心するのではあるのだが、やっぱり、何年経っても、父について人と話すのは自殺者の遺族のトラウマなのか、同じ業界の成功者へのコンプレックスなのかよくわからないのだが(多分両方)どうも疲れる。
昨日から訳もなく非常に滅入って集中力が極端に落ちてしまった。
去年は、父の偉さを滔々と語るご焼香の人(父の作品の所有者)にイライラして癇癪を起こしてしまい非常に後味悪く、その方が今年も大きなスイカを持って来てくださったのは嬉しかったのだが。。。、


IMG_4031.jpg


(17日午後8時37分追記、本文は16日に書いた)
窯詰め終わったところ。
満タン。
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Tag:陶磁器  Trackback:0 comment:10 

Comment

HIRA URL|
#- 2010.07.17 Sat20:34
凄いね!! 繊細な仕事にビックリです。昨日、知り合いのコンサートで山崎さんに会ったよ!! 全然変わってなかった。
C橋 URL|
#- 2010.07.17 Sat21:25
スイマセン。
技術的な内容には全くついて行けませんが、磁器って作るのが大変なんですね。
だから磁器は高いんですかね?
 URL|HIRAどの
#82yLf9uo Edit  2010.07.17 Sat22:03
いやどうも、長いのを読んでくれてありがとう!
あれですね、近代の彫刻や絵画の世界では、形だったり色だったりを何か抽象的に本質とする(なんかうまい言葉が浮かばないな)ようなところがあって、表面のきれいな仕上がりとか、心地いい肌触りや使い勝手はどこか表面的とされてきたと思うんですが、その表面的なところって、人に気持ちを伝えるのにとっても大切なのかもしれないなーと焼き物を初めて、つくづく思うようになりました。
彫刻家が形を追求するということを非常に大切にし、今でも自分にとっては相当大事なのですが、もう少し彫刻が普通に人々の気持ちに入った時代、例えば、平安時代とかでは、形を刻むという過程は、表面に漆を塗ったり、金工の装飾をつけたり、色を塗ったりより、近代のように特別に大事という事ではなかったのではないか。
そんな事を思います。
デザイナーさんは良くわかっていらっしゃる事かもしれません。

しかし、やっぱり、特に少し大きな作品だと、表面の奇麗さを犠牲にするような要素もないと、本当に生き生きしないとも感じており、形が生きてくれば、少しぐらい仕上げが悪くても気にならないというのも実感で、やっぱり良くわからないというところですね。

ところで、山崎さんって、鉄の山ちゃんですか?
彼は、つやつや、していて元気ですよね。
この間、千葉の奥地の美術館で、大規模な個展をやっていて見に行ってきました。
 URL|C橋様
#.y4oDXHE Edit  2010.07.17 Sat22:11
いやどうもどうも。
野球の応援で盛り上がっているところ、辛気くさい文章につきあってくださってありがとうございます。

うーん、やっぱり、手作りの磁器は相当技術的に上手くても時間を食うでしょうね。
そうなると、高いでしょう。
ブランドものの工業的に作った磁器も高いのですが、あれはどうして高いのかは、自分にはわからないのですが、デザインの段階でかなり、コストが掛かるのかな。
大量生産の前に試作品を何個も作って時間をかけて検討するのかな。
手作りしか出来ない自分には悔しいけれど、良いものもかなりあると思っています。

イワノビッチ URL|ドレスデン
#- 2010.07.22 Thu12:15
磁器にまつわる朝鮮陶工の拉致とか、ヨーロッパではじめて磁器を焼き秘密を守るために一生幽閉されたドレスデンの某さんとか悲しい話がありますよね。
日本人は文人趣味のようなんものがすきですね、それを高級とする傾向があります。昔からそうだったとはおもえないのですが。お茶の趣味のせいかな。
銀 URL|Re: ドレスデン
#F.S2sd/w Edit  2010.07.22 Thu19:08
ブログはいかがですか。

> 磁器にまつわる朝鮮陶工の拉致とか、ヨーロッパではじめて磁器を焼き秘密を守るために一生幽閉されたドレスデンの某さんとか悲しい話がありますよね。

うーん、、磁器はそれだけ画期的に見えたという事でしょう。あるいは、商業が活発になって来る時期で、磁器は儲かる儲かるということだったのでしょうか。
> 日本人は文人趣味のようなんものがすきですね、それを高級とする傾向があります。昔からそうだったとはおもえないのですが。お茶の趣味のせいかな。

茶陶というのは、桃山時代に現代美術みたいな感覚で驚くべきものとは思うのですが、自分の中にその感覚が全くないとも言えないのですが、意識して求めたい感覚ではないですね。
残念な事に、身近なものではないです。
大雑把に言えば自分は中国風だと自分では思っています。
案外、欧風かもしれないです。
桃山風で上手い人はたくさん居るので、自分が今更やってもどうしようもないとは思いますが。。。
洒落陶 URL|篩
#- 2010.07.23 Fri17:07
釉薬を強引に篩にかけた事がないので、鉄粉などがどうなるか。私も興味があります。
暑中お見舞い申し上げます。
銀 URL|Re: 篩
#F.S2sd/w Edit  2010.07.23 Fri19:52
やはり、本場では、ただ注ぐだけですか!
貴重な情報ありがとうございます。
自分の使っている瀬戸の石灰透明は、200目で溜まることは溜まるのですが、スポンジで静かに篩を撫でると落ちるという感じです。
で、結果ですが、0.3立米ほとんど染め付けだけでぎっちり詰め込んで、気づいたホクロは3つでした。
そのうち、大きいホクロ二つは菓子鉢にまとめてなのですが、3ミリもあり、多分窯詰めのときゴタゴタやっているうちに、ついた気がします。
残りの一つ小さい0.5ミリぐらいのは通ったかもしれません。

以前、自作の木灰と陶石の透明釉は一日擂っても200目とおるか通らないかで、ゴムへらで結構強引に通したのですが、そのときは、黒い点がかなり出てしまいました。
洒落陶 URL|
#- 2010.07.24 Sat11:27
ほとんど、問題ないレベルのようですね。経験的には、窯で降る確率が一番高いように感じます。バーナーの錆、窯周辺が汚くてそれを吸い込むなどです。丁寧な処は窯を焚く前に、毎回掃除機で
窯の内部、バーナーの噴出口などを掃除しています。
篩って言うくらいですから、軽く振りながら注いでいます。(笑)
 URL|洒落陶様
#.y4oDXHE Edit  2010.07.24 Sat17:53

私は、子供の頃から整理整頓が苦手で、成績表にcがついていたのですが、同じく情緒の安定cの性格で心配性で掃除機を窯の隅から隅まで掃除機をかけます。以前は棚板に雑巾かけていたのですがそれはさすがにやめました。
周りは整理整頓cで汚いのですが、窯焚きを始めてから、いつもの習慣なのですが、周りを掃除します。
それで舞い上がったゴミを吸い込んだのかもしれません。
今度は窯焚き前に周りも掃除します。
大きいホクロはどうも表面にペタッとついている感じでどこかでついたみたいですね。

やっぱり篩は、強制的に通すのはまずいみたいですね。

いつもながら、本場からのリアルなご教示ありがとうございました。



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プロフィール

ぎんよう

Author:ぎんよう
彫刻家でもある鈴木厚が磁器を中心に器を制作しています。

我が家の掃除機の塵の放射性物質
Cs137:641Bq/kg(検出下限39.7)
Cs134:211Bq/kg(検出下限19.3)
Cs合計:852Bq/kg(検出下限58.0)
採取時期:2014/1月~2014/3月

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