樋田毅著 記者襲撃 赤報隊事件30年目の真実

樋田毅著 記者襲撃 赤報隊事件30年目の真実 岩波書店

1987年の朝日新聞阪神支局襲撃事件について丹念に取材した本。著者はもと朝日新聞記者。
未解決で時効となった事件であり結論のない本なのだが、取材対象の右翼、韓国発祥の某新興宗教の面々が生き生きと描かれており、飽きさせない。
筆者の思い入れ深い朝日新聞へ批判も、事件当時に朝日新聞と批判合戦中だった前述の教団の新聞と朝日新聞の上層部が「談合」とも取れる秘密の会食を行ったことを書くなどなかなかのもの。
ずいぶん早い時期から翼賛的になってきた戦前、戦中の情けない様に関してはある大物右翼の言葉が強烈な皮肉となっていて面白い。
曰く、
「私は朝日新聞を信頼しているのですよ。戦前、平時は左翼を装っていたが、いざ国家の危急時には本来の姿を取り戻して愛国派の新聞になってくれた。今は平和の時代。仮の姿なんだから、好きにやっていただいて構いませんよ」

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「なぜ国々は戦争をするのか」ジョン・G・ストウシンガー著

この本では、第一次世界大戦、ナチス、朝鮮戦争、ベトナム戦争、ユーゴスラビアの紛争、イスラエルとアラブ、湾岸戦争、イラク戦争について、クッキリとした対立軸で、複雑な事態が分かりやすく物語られていて引きこまれ、上下2巻を個展会期中と言うこともあって1週間ほどで読み終えた。
どの立場にも公平に理解と批判を加えており、分かりやすさに重みがあった。
作者は、戦争について、歴史の必然や人類の攻撃性というたぐいの運命論的説明をこのまず、時の指導者の性格、考え方に原因を求め、責任の所在を明確に説明しようとする・
その中で、歴代アメリカ大統領は、ベトナム戦争、イラク戦争において意外なほど情緒的になる。
ベトミンを侮ったうえに、共産主義陣営が既に分裂して一枚岩ではなくなった事を認識せず過大な恐怖を抱いたり(ベトナム)、十字軍的正義感や父ブッシュ暗殺計画への復讐心などにとらわれる(イラク)などしたのだ。
そのために、既得の情報をしっかり研究、分析せず、避け得た戦争の泥沼に引きずり込まれていく。
その様は実に頼りなく愚鈍であり、失われた膨大な人命、社会的荒廃の責任は重大である。
ケネディでさえキューバ危機の冷静な判断等には評価が高いものの、ベトナム戦争時の子供じみた関わりには容赦ない。
日本がトランプ大統領のアメリカと共に戦うことの重大さをヒシと感じた。
作者ストウシンガーは1927年ウィーン生まれのユダヤ人歴史家でアメリカ在住。
ナチスからの迫害下、杉原千畝氏のビザを得てヨーロッパから脱出した。
その後、日本占領下の上海では、逃避行中のシベリア鉄道の車内で偶然出会った若い日本人外交官の尽力でゲットー送りをのがれ、高度な教育を受けられた。
日本との縁が深い人だが、エピローグ(日本語版向けではない)では、上海での恩人真鍋良一博士との53年ぶりの再会が描かれており、落涙もの。
ちなみに、翻訳は等松春男教授(=監訳)を中心に防衛大学関係者のグループによるが、メンバーには2等陸佐など自衛隊内の階級を持つ人が多い。
自衛隊関係者の中に、この本に現れているようなバランスの取れた知性に共感する人々がいることにホッとした。
訳文は、こなれた日本語とは言い難く、読みづらいところは多かったが、それも読み終わってみると素朴な肌触りとしてで心にのこっている。時にこの読みづらさって世界の解りづらさ痛さの象徴みたいだなどと思った。

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彫刻家でもある鈴木厚が磁器を中心に器を制作しています。

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